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ポール・バーホーベン監督『ベネデッタ』
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岩教大シネマフェスタで講評トーク
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今年30周年を迎えた札幌のミニシアター、シアターキノが、記念として出版した「若き日の映画本」を。30周年、本当におめでとうございます。私は自主上映を始めてから16年になりますが、上映会の度にチラシを置かせてもらい、活動のほとんどを支えてもらった気がします。
本書は所謂、シアターキノの歩みがテーマではなく、キノにゆかりのある監督、俳優、批評家などが若い人に向けて「お勧めする一本」を選出して寄稿した書籍です。例えば映画監督が人生に迷い何者でもなかった頃に打ちのめされた作品など、当時のエピソードを交えて書かれたものが多いので、映画を見てそれぞれの記憶にもっと巻き込まれたくなるような魅力があります。
冒頭、シアターキノ代表である中島洋さんの「映画を通して自分だけの<もう一つの国>を作る」お誘い文には深く感動し、何度も読み返した。なぜ映画を見るか。私もすがるように自分の中に、<もう一つの国>を作ろうとしてきたに他ならない。映画によって生まれ変わることはもちろんないのだが、人生の幾度のダメだった時に、脈絡もなく思い出すのは映画のシーンである。もしかして、あの登場人物たちが今もどこかで生きていると思うと、自分も頑張れる気がする。馬鹿げたことと思われるかもしれないが、何度助けられてきただろうか。
スマホの電源を切って、深く座り直し、照明がゆっくり消えて、心が一人になっていく。周りの呼吸を感じながら、この瞬間を味わうために映画館に通っているようなものだ。だから私も上映会で最も気をつけているのは、それがたった一人でも来やすい空間であるか。本書で阪本順治監督のいう、社会の「大きな何かと繋がっていなくてもいい」。たった一人で映画との繋がりを持つ時間を、何度も立ち返り大切にしたいと思っている。