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ポール・バーホーベン監督『ベネデッタ』

ポール・バーホーベンのファンとしては上半期最も楽しみにしていた映画の一つ、『ベネデッタ』。サツゲキ4番スクリーンで見ることができました。大きいスクリーンで上映してくれてありがとうございます。

6歳で修道院に入ったベネデッタが、彼女に起きた(起こした)奇蹟により権力を手にし、波紋と混乱を招くという17世紀初めの実在の人物をもとにした物語。

かなり感想が分かれると思うのですが、この言い方がふさわしいか恐れずに書くと、圧倒されるばかりで力が湧いてくるんですよね。家の外では暴漢を恐れ、修道院でも「自分の身体が最も近しい敵であり、賢さは後に仇となる」と教えられる環境にあって、どう進むか、どうしたいかの基準を自分のみに据え、最後まで信念を突き通したのがベネデッタ。やっていることは無茶苦茶だし当然多くの人を傷つけるが、なりたくない人生を拒否するために、そこに他人が考える倫理や道徳などはなから存在しないのだった。

ベネデッタの立場が修道女なだけに、これは前作『ELLE エル』以上に強烈だが、『ELLE エル』でどういう気持ちになっていいか受け止めきれなかった女性像が、今はわかる気がする。『ELLE エル』のミシェルも、「社会的な」レイプの被害者になることを拒絶して全てを飲み込んでいく。ベネデッタもミシェルも、もはや人間ではないように見えるが、私が考える「人間ぽさ」とは何なのか。

しかしこのパワー系感情移入の隙の無さよ…。こんな遥か昔ににベネデッタのような女性がいたということに揺さぶられたい。揺さぶられたくて映画を見ている。ありがとう、バーホーベン!長生きしてください!

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