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紙の本に未来はあるのか 01


日本に本屋がなくなっていく、紙の本が売れない。そんな現実に「本は大事」「本は素敵」と声を上げる人々を目にして、何が大事で何が素敵なのだろうという疑問が常につきまとった。別に否定したいわけじゃなく知りたいのだ。本にまつわることをは色々あるが、とりあえずシンプルに考えると紙の本(以下、紙本)はメディア(媒体)だ。まずはメディアとして考えてみることにする。

紙本はテキストや絵・写真などを運んでくるメディアだ。世界でそのジャンルを運ぶメディアとして長年圧倒的シェアを誇っていた。その牙城を近年電子媒体が脅かしている。同じことが起きてる音楽などを考えると、紙本ほど長く王座を握っていたメディアはそんなにないのではなかろうか。今蓄音機を使ってる人は見たことがない。

じゃあテキストなどを運ぶメディアに昔何があったか考えたらそうとう昔に巻物が先輩としてあるわけで、それに取って代わったのが紙本だとすると、当時も「巻物は大事」「巻物は素敵」と叫ぶ人たちがいたのだろうか。もっと遡ったら木簡?石碑?

と書きながら巻物について調べてたら1巻2巻の「巻」は巻物の「巻」だし、英語で書くVol.○(ボリューム)も巻物って意味らしいじゃないですか。取って代わられっぷりすごくないですか。

※ついでに知ったのだけどスクロールという言葉も巻物を読む動作のことらしい。ページめくりのような挙動とは違い巻物が切れ目なく読めるものだと思うと納得。


ともかく情報の運び手が「紙本」から「電子」に変わった。巻物から紙本になった時も、平置きできるから保存&運搬が楽になったり、ページが別れたから内容も探しやすくなった。紙本が電子になって置き場所が少なくて済むようになり、検索で特定の語句が探せるようになった。

人は便利なメディアへと当然のように流れていく。だとしたらもう紙本は滅びていく一方ではないだろうか。それを憂いているのは紙本を生業としている人たちが「自分の仕事がなくなる」と嘆くのを文化を傘に誤魔化したりしているだけなのではないか。巻物がなくなった時も巻物屋さんは嘆いたのだろうか。印刷機が登場して超ウルトラ写本がうまい職人は嘆いたのだろうか(多分嘆いたと思う)。

もしくはノスタルジーか。紙本に伴って存在する、人々の良い記憶への思いだろうか。「昔はよかった」「最近の若いもんは」と同じたぐいだろうか。

さて、ここまで書いておいてなんだけど、自分は本屋が好きである。あと紙本も好きだ。できるならば紙で買いたい。でも電子のほうが便利なことも多いので電子でも買う。「好き」とだけ言っても言語化しなきゃ伝わらない。とはいえ紙本を取り巻く世界は商売的な問題、流通、文化、薄利多売、再販制度などなど複雑怪奇でとてもじゃないけどシンプルになんて語れない。

そんなことを漠然と思っていた時、某取次会社の若者と会った。初めて会った時に2、3時間話しただろうか。上記みたいなことを話していた気がする。そんな中で彼は「紙本に関わる仕事はとても多岐に渡るし仕事上付き合いもある。でも紙本がこれからどうなるのか、そんなことを真剣に話したりは仕事の付き合いだからこそやりづらい印象がある。」というような話が出た。

その帰り道「じゃあ正体を隠して話せば良いのでは?覆面とかして。」と思いついた。半分は冗談だ。ただみんな覆面してたら面白いというだけの話。そんなの実現しないよねと思いつつも、せっかく思いついたから彼に伝えたら「やりたいです!」と言い出した。

というわけで覆面座談会はやることになったわけです。次回へ続く。

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