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風と未来と子どもたち

大海原を見ながら全然反応のない竿先を眺めているときでも、ふと風の変化を感じたり、朝焼けの美しさに感動したり、そんな日常がとても大事な気がしている。
ここ数年は、人よりも環境が僕の興味の中心で、特に人間を対象とした表現や思考はほとんど興味がない。戦争、環境汚染、経済活動、政治・・・どれをとってもうんざりすることばかりで。

そんなことをつらつら思う昨今だが、最近では珍しく個人制作者としてさっぽろアートステージのキッズアートフェスに参加した。
この作品、風を音や映像に変換したちょっとしたメディアアート表現を使ったもの。
芸術の森に設置した4つの風力センサーで受け取られるリアルタイムの風のデータをシンセサイザーの音のカットオフ、レゾナンスに割り当て、かつ映像にも風のゆらめきとして割り当てている。
これによって、日々同じゆらめきではなく、毎日の変化を楽しめる作品ともなっている。

4つの風力センサーにはMicro:bitのウェザーモジュールであるWeather:bitを使用し、それぞれが風向、風力を取得している。そして取得したデータは学内のネットワークを介して、研究室にあるコンピュータに送られ、日々の風のログとして、毎時間ごと保存作業は継続されている。
そのデータをリアルタイムに受信し、芸術の森で日々変化する風を札幌市の中心部でも体感するというのがこの作品の大きな目論見だ。

作品には、予め風から生成される音だけを小学生に聞いてもらい、自由に描いてもらった絵を使用している。
この絵がまた自由な発想で非常に良かった。
子どもたちのほうがずっと僕らより自由だ。

そんな子どもたちの絵が日々の風によって揺らめく。
遠くの風を聞き、遠くの風を見てみる。
詩的な行為であるとも思うが、でも今僕たち人類にはそんな視点が必要なのではないだろうか?
未来は子どもたちのものだ。
身勝手な大人たちのひとりとして、彼らに対して大人たちは我々の汚れた思考、汚した環境を正してもらう未来を用意しなくてはいけないのではと思う。

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