4月 16, 2023
モダンラブ東京『彼を信じていた十三日間』
新潟国際アニメーション映画祭への長期出張などあって3月は投稿...
Amazonプライムで松居大悟監督『ちょっと思い出しただけ』を。びっくりするくらい良い映画だった。映画館で見なかったことを心から後悔した。観客には主演二人の別れを示された上で物語が進む構造になっているので、もう戻らない限りある夜の時間が美しすぎて、同じ暗闇に身を置いてみたかったから。
ハッピーエンドで終わらない恋人たちの映画なので、近いところで『花束みたいな恋をした』や『ブルー・バレンタイン』と比較されているそうだが、全く違う。確かに恋愛は大きな要素だけど、描いているのは人生そのものだ。
二人の別れの前に、池松壮亮演じる照生は、怪我のためダンサーの道を絶たれてしまう。映画は時間を遡って進むから、別の職業につきながら元気に生きている照生が、実は思い描いた人生が真っ白になり、絶望に直面していた過去があったのだと明らかになってくる。
映画のタイトル『ちょっと思い出しただけ』は、誰しも胸がキュっとなるような終わった恋を思い出すことがあるよね…、という意味も確かにあるだろう。しかし、人生はもちろんそれだけではない。もうダメだ、明日から生きてはいけないと思う出来事が起こっても、後にはその過去を、誰かに、酒場で、「ちょっと思い出しただけ」と言える日が来る。自分の居場所になる朝焼けを迎えることが、きっとできる。
ラスト、ここ!というタイミングで流れるクリープハイプの「ナイトオンザプラネット」を思うと、いつでも鼻の奥がツンときてしまう。素晴らしい人生賛歌だった。