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[漫画]少年のアビス

週刊ヤングジャンプで連載中の峰浪りょう作「少年のアビス」が面白い。

あらすじ
何もない町、変わるはずもない日々の中で、高校生の黒瀬令児は、“ただ”生きていた。家族、将来の夢、幼馴染。そのどれもが彼をこの町に縛り付けている。このまま“ただ”生きていく、そう思っていた。彼女に出会うまでは――。 生きることに希望はあるのか。この先に光はあるのか。“今”を映し出すワールドエンド・ボーイミーツガール、開幕――!!

絵柄を見てあらすじを読んだ時点では、なんかほんわかしたボーイミーツガールものかな、と思って読み進んでいったら、全然そんな爽やかなものじゃなく、日本の地方における閉塞した空気が蔓延した怪作でした。ファンタジー要素なんて一切ない、暗い暗いとても暗い漫画です。そういう漫画苦手な人にはオススメできません。

主人公、黒瀬令児の置かれている環境はなかなかに厳しい。看護師の母、引きこもりの兄、認知症の祖母という家庭で育つ彼は、高校卒業後もこの町を離れられないと諦めきっており、町で仕事を探し家計を支えること以外の選択肢はない(ちなみにこの母が相当やばい)。唯一の支えは幼馴染の秋山朔子(あだ名はチャコ)が教えてくれたアイドルグループ「アクリル」の動画を見るくらい。ちなみに推しメンバーは青江ナギ。

チャコは東京の大学を受験することが決まり、町を出ていきそうだ。もうひとりの幼馴染の峰岸玄は、いわゆる不良のボスのように君臨しており、父親も町で幅をきかせている建設会社の社長だ。このまま同世代の支配者として町で君臨するのだろう。そんな町のコンビニで偶然働いていた青江ナギと主人公が出会うことで物語が動き出す。

普通に考えると、いろいろな障害を乗り越え、青江ナギと連れ立って町を出て、都会でも色々苦労しながら2人手を取って…みたいな流れになるんだろうなあと思ってたら、2話目で2人は心中を計画する。

それ以降についてはネタバレになるので読んでほしいところですが、外から見れば「そんな町から出てしまえばいい」と簡単に言えそうなことが、内側から見たらこんなにも身動きが取れない状況があるんだろうか、と思えるくらい主人公の黒瀬令児には逃げ場がなくなっていく。中には町から出そうと努力してくれる人々もいる。例えばそれは高校の先生だったりするんだけどこの先生も先生でやばい。

それもそれぞれの欲望がもととなった行動がゆえに、人間関係は狭い世界でどんどん複雑になっていく。ある意味闇を抱えず素直な高校生のチャコ、権力者として何不自由なく過ごしている玄、2人の幼馴染の存在はある種の救いだったはずが、そこさえも崩れていく。そして、この町の人間関係の複雑さは今だけがそうなのではなく、過去もそうだったことが少しずつ見えてくる。閉じた町の複雑な人間関係は自分たちの親世代から続くがんじがらめの世界でもあった。

もしかしたら現実にもこんな町はあるのかもしれない。ファンタジー感なんて1ミリもない。この漫画ほどドラマチックではないにしても、町から出られないと心を閉じて生きている人は大勢いるかもしれない。

まだまだ連載中の「少年のアビス」。幼馴染の3人がこれからどうなっていくのかまだまだ目が離せない。実写化するならこういう漫画だろ!とも思うけど暗すぎて誰も見ないかもしれない。

となりのヤングジャンプで3話まで無料で見れるようですので気になる方は是非
https://tonarinoyj.jp/episode/10834108156765668111

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