4月 16, 2023
モダンラブ東京『彼を信じていた十三日間』
新潟国際アニメーション映画祭への長期出張などあって3月は投稿...
昨年、早稲田松竹で田中絹代監督特集が上映された際、そのなかの『乳房よ永遠なれ』を大九明子監督が絶賛されていたのでアマプラで鑑賞。邦画クラシック作品はU-NEXTよりアマプラに豊富にある。良い時代になった。
子供ふたりを育て、夫にかしづくように生きてきた女性が、夫の浮気により裏切られ離婚。唯一の楽しみにしていた短歌が見出され、自立への道を歩き始めるかのように見えたが、同時に重い乳癌が進行していてーーー。
制作は1955年。田中絹代のことは女優出演作でしか存じ上げなかったので、わずか戦後十年で映画監督として活躍されていた女性がいたことに、どれだけの苦労があったかと驚く。しかも本作が描いているのは女性の心の解放である。
注目すべき歌人の誕生を想って会いに来た男性記者に、歌はもう詠まないと駆け引きをし、子供のような甘えを言い、初めて生きる楽しさを感じるのだ。
本作の主なロケ地はなんと札幌市で、現在に通じる景色はないものかと映画の中をキョロキョロしてしまうが、見慣れぬ景色ほど異なる古い時代において、こんなチャーミングで生きた女性の表情を見ることができる。それが2022年の私の心を揺らし、深く感動したのだった。