クリエイティブシェアオフィスtabの公式サイトです。

またやるのか12人

札幌演劇シーズン2022夏メインビジュアル

札幌で演劇をやっているELEVEN NINES(イレブンナイン)というところに関わっているのですが、今年2022年の夏に『12人の怒れる男』の公演を行います。なんとこの演目4回目。毎回大変な公演なのに4回目。前回の公演で性も根も尽き果てたのに4回目。しかもコロナが落ち着いてきたとはいえ舞台芸術が冷え込んでいるこんなときに。

これまでの3回をざっくり振り返ってみます。

負担を減らすために企画された2014年版

最初の公演は2014年夏。当時は団体代表の納谷真大さんによるオリジナル作品を主に公演していました。つまり彼が作品を書いて、演出して、なんなら演じて公演を行う。彼がいなければ成立しないわけです。しかしそんな彼が1年間のうち約半年ほどはよその舞台に客演する人気者だったため、彼がいないと活動自体が止まるという日々。それは活動を続けていくには非常にマイナスでした。

そこで何らかの形で納谷さんの負担を減らしつつ公演を打つことができないかと試行錯誤していたのですが、そんななか当時俳優として所属していた小島達子さんが「元々いつかやりたいと思っていた」といって提案してきたのが名作『12人の怒れる男』。すでに戯曲(簡単に言うと台本みたいなものです)は存在するので、納谷さんがゼロから新しく作るという負担は減らせるので、やりましょうと企画を進めることに。とはいえこの作品は12人の男性が出る内容。当時のイレブンナインに男性はそんなにいません。それであればと「今見せたい俳優を揃えよう」ということでキャスティングが行われ12人の俳優が選ばれました。これで「名戯曲」を「今見せたい俳優」をキャストに揃え「納谷が演出」を行う公演というスタイルが生まれたわけです。

この公演は生活支援型文化施設コンカリーニョで公演が行われ、評判が評判を呼び1200人を集客。その頃の札幌小劇場演劇というと肌感覚で1000人来てもらえたら成功みたいな感じだったので、1000人越えは大成功の部類でした。

公演の様子(2014年)

札幌演劇シーズンで行われた2015年版

札幌では「札幌演劇シーズン」というイベントが毎年夏と冬の年2回行われています。札幌で生まれた名作をピックアップし、1ヶ月の間札幌の様々な劇場で上演することで、札幌に演劇・劇場文化を根付かせようという目的で2012年から始まりました。詳しく書くとややこしいので公式サイトをご覧いただくとして、劇団側から見れば「選ばれると劇団単独でやるよりも良い状況で公演が行える」イベントという側面があります。

そんな札幌演劇シーズンにイレブンナインの『12人の怒れる男』が選ばれ、2015年夏に再び公演を行うことに。こういった評価はとても嬉しいことです。キャストを少し変更して行われたこの公演は、札幌だけでなく富良野でも行われ、のべ3000人以上の方に見てもらえるという快挙を成し遂げました。地方の小さな劇団が3000人以上集客したということは全国的に話題になるほどだったらしいです(間接的に聞いたのでよくわかりませんが)。

ふらの演劇工場での様子。たくさんの方が来てくれました。

レパートリー作品として行われた2018年版

この時点で達成気分です。よくやった。がんばった。さあ次はどうしようといろいろやっていたら、2018年にまた札幌演劇シーズンから声がかかりました。今度は「札幌演劇シーズンのレパートリー作品として」というものでした。これは「過去に札幌演劇シーズンで上演されたものの中からさらに優れたものを行う枠」みたいなかんじで、つまりなんか特別扱いしてくれるようです。会場も今まで「12人の怒れる男」を公演していた225㎡のコンカリーニョから1826㎡のかでるホールです(普通だと収容人数で言うところですが、12人は変速舞台なので広さで比較してください)。

これは大変。しかも前回の公演で3000人来ている。蓋をあけたら前回より少なかったという事態は避けたい。というわけでもう記憶も曖昧ですが、みんながすごい頑張って結果としてのべ5000人以上のお客様に見ていただくことができました。これはすごいぞ。3000人でもすごいのに5000人だ。よかったよかったあー疲れた。

かでるホールは広いから怖い

ちょっと離れていたら新型コロナ

この時点で、札幌でのイレブンナインの評価はある程度固まっただろうと判断しました。いろんなやり方も編み出されました。ここまでのやり方を踏襲しつつ、少しずつ新しいことを増やしていけば良いカタチで進んでいくだろう。そんな気分で個人的には関わりを勝手に軽めにしました。もう大丈夫だろうと。

そう思っていたらコロナです。舞台芸術は大ダメージ。イレブンナインもいくつか公演が中止になったり延期になったりしました。ある程度時間が経っても、まだまだ感染症対策を厳重に行いながらという時期に舞台を見に行くと、劇場の空気はコロナ前から一変したように思えました。感覚的にですが「この文化はほっといたら消えてなくなるのでは?」くらいの印象。演劇全体がどうかはわかりませんが少なくともイレブンナインの公演は僕にそう思わせるには十分でした。また、外から見ていて2018年の12人ほどしっかりと宣伝ができているようにも見えませんでした。

そこで、以前ほどは難しいにせよイレブンナインとの関わりを改めて増やすことに。まずは広報を手伝ってもらえる人を募集、何名かの方に協力いただき広報部隊を整え始めました。そして全体に対して「もう過去に勝ち得た価値はゼロになったと思ってください。」と伝えました。最初からやり直しの気分です。

またやるのか12人

そんなときに飛び込んできたのが「札幌演劇シーズンが10周年なんだけどレパートリー作品として『12人の怒れる男』をやらないかという話が来ている。」というものでした。この段階で12人かと。もうちょっとゆっくりやりたいよ!もうアイデアもない!使い切った!もう3回もやってるんだよ?前回5000人だよ?ということは5000人以上お客さんに見てもらわないと駄目じゃん。ええーやだーやりたくないー。まだコロナの影響で集客自体戻りきってないじゃん。絶対大変だよ、無理無理無理無理。

とウダウダ言いながら2022年版『12人の怒れる男』を絶賛仕込み中です。すでに情報は解禁されSNSでは過去の公演をご覧くださったお客様からの期待値の高さが垣間見えてきます。札幌演劇シーズン10周年記念レパートリー作品に選んでくださったのだから期待を裏切るわけにはいきません。まぁ公演自体は納谷演出・小島プロデュースにより素晴らしいものになるでしょう。でも素晴らしいものをお客様に見てもらうにはそこに足を運んでもらわなければいけません。そのためには事前の宣伝も大事です。作品と宣伝。両輪揃ってはじめて「なんとなかった」といえる日が来ると思ってます。

夏が終わった時「あーなんとかなった」と一息つけるといいなと願うばかりです。

イレブンナイン公演『12人の怒れる男』
https://s-e-season.com/program/angryman/
日程:8月13日(土)〜8月20日(土)
会場:かでるホール
料金:一般 4,000円 / 学生1,500円

page_top