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[漫画]性別「モナリザ」の君へ。

思考実験という言葉がある。すごい簡単に言えば頭の中で想像するのみの実験のことだ。この漫画『性別「モナリザ」の君へ。』は思考実験の1つだと思いながら読むと読みやすい。

この物語の世界では人間は性別がない状態で生まれる。その後12歳くらいから14歳頃にかけて、だんだんと自分が選んだ性へと肉体が変化していく。両性具有のような状況から、自分自身が「女性(男性)になりたい」と思えば体が自然に女性(男性)化していくわけである。「え?それって生物的にどういう状況?」「その変化過程で気が変わったらどうするの?」とかいうリアリティのある質問はやめておこう。だって思考実験だから。

正直、その設定で色んな人に質問したいくらい面白い設定だ。

あらすじ
18歳まで性を選択しなかった高校生のひなせ。2人の幼馴染はそれぞれ男と女を選び人生を謳歌している。ある日、そんな2人から告白をされる。幼馴染2人は異性愛者なので、主人公に自分と恋愛ができる性を選んでほしがる。自分では変わらぬ日々でよかったのに選択を迫られる主人公のひなせは果たして…。

特殊な設定の中での恋愛ものである。そういう意味ではそんなに難しくない。リアリティは前提として全くないわけだけど、実はこの設定は今の世界における性の問題を極端な形で描いている作品のようにも感じる。物語の中では幼馴染2人は真剣に主人公に向き合い、主人公は2人を通して真剣に自分の性へと向き合うこととなる。そんななか「最終的に選ばないで、今のままの関係を続ける」という逃げの選択肢は、ある事情によりできないことが判明してくるのだけど、そのあたりはさすがエンターテイメント、単なる思考実験では終わりません。

自分が愛した人がこれから性別を選ぶとして、果たして同性を選んだらその人への気持ちはどう変化するのだろうか。性別を2つの選択肢から選ばなければいけない状況というのは果たして全ての人々を幸せにしているのだろうか。自分が生まれ持った性を持っておらず、選択できるとしたらどのような行動をとっただろうか。

そんなことも考えながら読める作品だ。現在の性に関する問題はなかなか他人事を自分事としては考えられないが、こんな状況だとしたらどうなのか、ということを考えることで、自分事とまではいかないまでも、今までとは違う考え方が生まれるかもしれない。

もちろん、そんなことを考えず、ちょっと変わった恋愛ものとして読んでも楽しめます。まだ連載は完結していないのでまだまだ目を離せません。オンラインの漫画らしく、物語の随所に特定のカラーをうまく使って表現しているところにも注目して読むと楽しいです。

『性別「モナリザ」の君へ。』吉村旋著(ガンガンONLINE)
https://www.ganganonline.com/title/12

※生まれた後性別が変更する生き物いたよな、と思って調べたら魚に結構いるそうで、それも色々社会のパターンによって変わるそうで。そうやって考えるとそんなにトンデモな設定ではないかもしれませんね。

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